Dozerの料金と無料でできる範囲|買い切りか、継続課金か
メニューバーを整理する常駐アプリを探していて、価格を先に知りたい。この記事が扱うアプリについての答えは0円で、機能を絞った無料版と有料版に分かれている作りでもない。ただし、価格が0円であることと、使い続けるための負担が0であることは別の話になる。この記事は、価格表に載らない負担がどこに移っているのかを、公開されている情報から順に確かめたものである。
価格は0円。ライセンスの形まで確かめる
配布ページでも、公開されているソースコードの各ファイルの先頭でも、扱いは一貫している。ソースコードの冒頭には次の一文が置かれている。
This Source Code Form is subject to the terms of the Mozilla Public License, v. 2.0. 出典: github.com
Mozilla Public License 2.0で公開されており、利用に金銭のやり取りは発生しない。試用期間が切れて機能が減ることも、一定日数ごとにライセンス確認のために通信することもない。この形の道具では、以下の3つがまとめて無い状態になる。
- 購入手続き。決済も、ライセンスキーの管理も発生しない
- 台数の制限。何台のMacに入れても条件は変わらない
- 支払いが止まったときの機能停止。課金の仕組み自体が無い
継続課金の道具では、支払いが止まった時点で機能が減るか使えなくなる。買い切りの道具では、購入したバージョンは残るが、新しいバージョンは別料金になることが多い。この記事の道具はどちらにも当てはまらず、価格という軸では比べる相手がいない。比べるべき軸が別にある、というのがここでの結論になる。
更新の記録が、価格表の代わりになる
金額の代わりに見るべきなのは、公開されている更新の記録である。2026年9月10日時点で確かめられる範囲では、配布されている最新版は4.2.0で、公開日は2020年7月13日になっている。その前の4.1.0が2019年11月、4.0.0が2019年8月なので、版が上がる間隔は当初から年単位だった。ソースコードのほうは配布後にも手が入っており、最後に更新されたのは2022年11月1日である。公開されているリポジトリには8,717件の星が付いており、利用者の数と更新の頻度は比例していない。
ここから読み取れるのは、費用が金額ではなく時間の側に移っているということである。macOSは毎年大きな更新が入り、メニューバーの扱いもそのたびに少しずつ変わる。有料の道具では、この追随の作業が料金に含まれている。無料で公開されている道具では、追随するかどうかは作者の都合で決まり、利用者の側に約束を求める先がない。
これは欠点の指摘ではなく、費用の置き場所の違いである。追随が止まったときに困るのが自分か、それとも別の手を探せばよい程度かで、選ぶべきものが変わる。
もう1つ、記録の読み方で気をつけたい点がある。星の数や利用者の多さは、いま動くことの根拠にはなるが、これから動き続けることの根拠にはならない。多くの人が使っている道具ほど代わりを探しやすい、という意味では役に立つ指標だが、更新が続くかどうかとは別に見ておきたい。判断に使うなら、星の数ではなく、最後に版が上がった日付とソースコードが最後に触られた日付の2つを並べるほうが実際的である。
なお、公開されている道具の場合、作者が手を止めても第三者が引き継げる形にはなっている。ライセンスがそれを許しているためで、実際に引き継がれた例は他の分野でも珍しくない。ただし引き継がれるかどうかは事前には分からないので、選ぶ時点の判断材料にはしにくい。
配布の状態も、実質的な負担に含まれる
金額以外の負担として、入れるまでの手間も数えておきたい。公開されている案内では、パッケージマネージャ経由の1行と、配布ページから取得する手動の方法の2つが示されている。ところが2026年9月10日時点で、パッケージマネージャ側の一覧にこのアプリの登録は残っていない。実際に問い合わせても該当なしと返るため、案内どおりに1行を打っても入らない。
手動で取得する場合にも1段階ある。配布されているディスクイメージは、Appleの開発者向け証明書で署名されている一方、公証は受けていない状態で配られている。macOSの初期設定では、公証を受けていないものを開こうとした時点で警告が出て止まる。開くには追加の操作が必要になり、その操作に踏み込むかどうかは利用者の判断になる。
金額の比較表にはこの手間が出てこない。導入までに何分かかるか、警告に対して自分で判断できるか、という部分は、有料の道具では料金に含まれている工程である。0円という表示は、この工程を自分で持つことと引き換えになっている。
会社から支給されたMacを使っている場合、この負担はさらに重くなる。管理されたMacでは、公証を受けていないアプリの実行が組織の設定で止められていることがあり、その場合は利用者の側で手順を踏んでも起動しない。導入の可否を情シスに確認するところから始まるので、無料であることが導入の速さにつながらない。逆に、購入手続きを通す必要がある有料の道具のほうが、社内の承認経路に乗せやすい場面もある。
複数台に入れる場合の手間も、形によって差が出る。有料の道具はライセンスの管理が発生する代わりに、導入そのものは案内された手順で揃う。無料で公開されているものは台数の制限が無い一方で、1台ずつ同じ手順を踏むことになり、警告への対処も台数分だけ発生する。台数が増えるほど、金額の差は縮み、手間の差は広がる。
Intel向けの実行ファイルであることの意味
もう1つ、金額に出てこない前提がある。配布されている4.2.0は、Intel向けの実行ファイルのみで作られている。Apple silicon搭載機では、macOSの変換機構を通して動く形になる。動作そのものに支障が出るわけではないが、この変換機構には提供期間の見通しがAppleから公開されており、いつまでも当てにできる仕組みではない。
常駐アプリは、一度入れたら何年もそのまま置く種類の道具である。数年単位で置くつもりなら、いま無料であることよりも、数年後にそのまま動いているかどうかのほうが判断材料として重い。逆に、いまの環境で当面しのげればよいという使い方であれば、この点は問題にならない。
自分のMacがどちらの系統か、また手元のアプリがどの形式で作られているかは、Finderでアプリを選んで情報を見るウインドウの種類の欄で確かめられる。手順はAppleサポートに公開されている。
有料の道具を検討する場合、この点は価格ページではなく動作環境の欄に書かれていることが多い。Apple silicon対応と明記されているか、対応するmacOSの版がいつまで更新されているか、を見ておくと、価格の数字だけでは分からない差が見える。金額が高いほうが必ず新しいわけではないので、価格と対応状況は別々に確かめたい。
3つの費用の形を、同じ表で並べる
金額の形は大きく3つに分かれる。それぞれが何を買っているのかを並べると、比べる場所がはっきりする。
| 費用の形 | 支払い | macOSの更新への追随 | 支払いを止めたとき |
|---|---|---|---|
| 無料で公開 | 0円。寄付は任意 | 作者の都合で決まる | 支払いが無いので何も起きない |
| 買い切り | 一度だけ | 次の大きな版から別料金になることがある | 買った版はそのまま残る |
| 継続課金 | 毎月または毎年 | 契約が続く間は含まれる | 機能が減るか使えなくなる |
無料で公開されているものは、支払いを止めるという概念が無いため、いちばん右の欄で失うものが無い。一方でいちばん右から2つ目の欄に約束が無く、そこが有料のものとの分かれ目になる。
買い切りは中間の性質を持つ。買った版は手元に残るが、macOSが大きく変わったときに動く保証は無く、追随した新しい版が別料金で出ることがある。この形は「いま買った分は自分のもの」という感覚に合う一方、数年ごとに買い直しの判断が来る。
継続課金は、追随を毎年買い続ける形になる。金額の総額は長く使うほど大きくなるが、macOSが変わったときに誰が直すのかがはっきりしている。常駐アプリのように毎日使うものでは、この点を金額より重く見る人もいる。
0円の道具が使えなくなるときの出方
有料の道具が使えなくなるときは、たいてい前もって知らせが来る。販売の終了、新規受付の停止、サポート期限のいずれかが告知され、移行の猶予がある。無料で公開されている道具では、この知らせが無いまま状況が変わることがある。
実際の出方は、次のいずれかになることが多い。
- macOSを大きく更新した日から、挙動が変わる。前日まで動いていたものが、その日だけ動かなくなる
- 入れ直そうとしたときに、案内どおりの手順が通らなくなっている
- 配布ページは残っているが、新しい版が出ないまま年単位で時間が過ぎる
いずれも、その時点で初めて気づく形になる。金額が0円である以上、告知の義務も、移行を支える窓口もない。ここを負担として数えるかどうかが、選び方の分かれ目になる。
対策として現実的なのは、いま使っている道具が止まったときにどうするかを、困る前に一度だけ考えておくことである。代わりが見つかるまで並び順を手作業で我慢できるのか、それとも仕事が止まるのかを見積もっておけば、実際に止まった日に慌てずに済む。
寄付という支払い方をどう考えるか
配布ページには、作者への寄付を受け付ける外部サービスへの導線が置かれている。金額は決まっておらず、送らなくても使える。ここが継続課金や買い切りとの決定的な違いで、支払いと機能が結び付いていない。
寄付が向くのは、その道具が自分の手元で長く役に立っていて、作者に続けてほしいと考える場合である。一方で、寄付を送っても、次の版が出ることや、macOSの更新に追随することの約束にはならない。約束を買いたい場合に選ぶべきなのは寄付ではなく、サポートの範囲が明記されている有料の道具になる。
- 金銭を払いたくない。手間は自分で引き受けられる。無料で公開されているものが合う
- 金額よりも、更新が続くことと問い合わせ先があることを買いたい。有料のものが合う
- いまは無料のもので試し、続きそうなら有料のものに移す。この順で決める人が多い
3つ目を選ぶ場合、移るときに何が引き継げないかを先に見ておくと迷いが減る。この種の道具は設定を独自の形で持っているため、並び順や隠す対象の指定は移行先に引き継げないことがほとんどである。
金額ではなく、負担の置き場所で選ぶ
ここまでを費用の軸で並べ直すと、比べるべき項目は次の4つになる。
- 金銭。0円か、買い切りか、継続課金か
- 追随。macOSが更新されたときに、誰が対応するのか
- 導入。案内どおりの手順で入るか、警告に自分で判断を下す場面があるか
- 寿命。数年後も同じ形で動く前提が立つか
0円の道具は1つ目だけが有利で、残りの3つは利用者が引き受ける。有料の道具はその逆になる。どちらが得かは、Macを何台使っているか、更新のたびに設定を見直す時間があるか、道具が止まったときに困る度合いがどれくらいかで変わる。
判断の材料として、機能の範囲はできることに、同じ分野の道具の作りの違いはほかの道具との違いに整理してある。金額の考え方は料金、購入前によく聞かれる点はよくある質問、実際に試す入口はダウンロードにある。
よくある質問
有料版や、あとから課金される仕組みはありますか?
ありません。Mozilla Public License 2.0で公開されており、決済の仕組み自体が用意されていません。試用期間の終了で機能が減ることも、台数の制限もありません。配布ページに作者への寄付の導線がありますが、送らなくても機能は変わりません。
無料なのに負担があるとは、具体的に何ですか?
macOSが更新されたときの追随、導入時の手順、数年先まで動く前提の3つです。有料の道具ではこれらが料金に含まれますが、無料で公開されているものでは利用者の側の時間と判断になります。金額が0円であることと、負担が0であることは別に数えてください。
寄付を送ると、更新やサポートが受けられますか?
結び付いていません。寄付は作者を支える意思表示であって、次の版が出ることや問い合わせに回答が返ることの約束にはなりません。更新が続くことや連絡先があることを条件にしたい場合は、サポート範囲が明記されている有料の道具を選ぶほうが目的に合います。
無料のものを試してから有料のものへ移せますか?
移せますが、設定は引き継げないと考えておくのが安全です。この種の道具は、隠す対象の指定や並び順を独自の形で持っているため、移行先で自動的に再現されることはほとんどありません。移す前に、いまの並び順を書き出しておくと作業が短く済みます。