iStat Proは今も使えるのか|後継と乗り換え先の決め方
iStat Proという名前を覚えているのは、Macの画面をF12で切り替えると現れる半透明の板に、CPUの使用率や温度を並べていた人である。いま同じものを入れ直そうとしても、置き場所そのものが無い。この記事は、なぜ動かなくなったのか、同じ数字をいま何で見るのか、そして乗り換えたあとにメニューバーで何が起きるのかを、公開されている資料をもとに整理したものになる。
動かなくなった理由は、アプリの側ではなく置き場所の側にある
iStat ProはMac OS Xのウィジェット置き場、いわゆるDashboardの上で動く部品だった。アプリではなく、Dashboardという入れ物に差し込む形の小さな部品だったので、入れ物が無くなれば動きようがない。
Dashboardの最後の安定版は1.8で、公開は2011年7月20日である。対応していたのはMac OS X 10.4 Tigerから macOS 10.14 Mojaveまでで、その次の10.15 Catalinaで姿を消した。
Operating system: Mac OS X 10.4 Tiger to macOS 10.14 Mojave 出典: en.wikipedia.org
Dashboardは10.10 Yosemiteの時点ですでに初期状態では無効になっており、有効にする設定を自分で入れた人だけが使い続けていた形になる。つまり終了は突然ではなく、5世代ほどかけて段階的に進んだ。いまMacを買い替えた人が「前のMacでは動いていたのに」と感じるのは、その途中の版をずっと使い続けていた場合が多い。
ここで押さえておきたいのは、乗り換え先を探す作業が「同じアプリの新しい版を探す」ことではない、という点である。置き場所が変わった以上、数字をどこに出すかを決め直す作業になる。候補の名前を並べる前に、そこを先に理解しておくと迷いが減る。
作り手の系譜と、常駐する場所が変わった経緯
iStat Proを公開していた作り手は、その後に社名を変え、同じ系統の製品をメニューバーの側へ移した。現在その系統にあたるのがiStat Menusで、開発元の製品ページによれば最新の版は7.5、公開は2026年9月14日、動作にはmacOS 11以降が要る。
バージョンの刻みを追うと、メニューバーへ移ってからの歩みが見える。6.0が2017年9月25日、その系列の最後の更新である6.73が2023年11月13日、そして7.0が2024年7月31日という並びになる。6年以上にわたって6系が更新され続けたことになり、Dashboardの部品だった頃とは製品としての寿命の考え方が違う。
置き場所がDashboardからメニューバーへ移ったことで、良くなった点と厄介になった点の両方がある。良くなったのは、キーを押して切り替える必要が無くなり、常に視界に入るようになったこと。厄介になったのは、視界に入る場所が画面上端の細い帯しかなく、そこを他の常駐アプリと取り合うことになった点である。
Dashboardは全画面を使える板だったので、CPUの折れ線もメモリの内訳もディスクの残量も、好きなだけ並べられた。メニューバーは横方向に数十ピクセルしか無い。同じ情報量を出そうとすれば、当然そこが詰まる。乗り換えを考えるときは、この制約を先に見込んでおきたい。
同じ数字を見る道は、いま3つに分かれている
Dashboardの部品でやっていたことを、いまのmacOSで実現する道は大きく3つある。どれが良いかではなく、自分がどれだけの頻度で数字を見るかで決まる。
1つ目はmacOS標準のアクティビティモニタである。追加の費用も追加の常駐アプリも要らない。Appleの案内には、Dockに折れ線を出せると書かれている。
See the CPU activity on your Mac in the Activity Monitor window or as a live graph right in the Dock. 出典: support.apple.com
2つ目は有料の常駐アプリである。前述のiStat Menusがこれにあたり、CPU、GPU、メモリ、ディスク、ネットワーク、センサー、バッテリー、天気などをメニューバーに並べられる。7.0の公開時の案内には、同じ項目を出したときの消費が6系の5分の1まで下がった場合があると書かれており、常駐し続ける道具としては効いてくる改善になる。
3つ目は無料で公開されているものである。GitHubで配布されているStatsは、CPU、GPU、メモリ、ディスク、ネットワーク、バッテリー、温度や電圧といったセンサー、Bluetooth機器、複数のタイムゾーンの時計を扱う。動作にはmacOS 12 Monterey以降が要り、ソースはMITライセンスで公開されている。
| 道 | 費用 | 置き場所 | 対応macOS |
|---|---|---|---|
| アクティビティモニタ | 追加費用なし | ウインドウとDock | 標準搭載 |
| iStat Menus | 買い切り | メニューバー | 11以降 |
| Stats | 無料(MIT) | メニューバー | 12以降 |
表にすると分かりやすいが、決め手は費用ではない。1日に何回その数字を見るかである。週に1度しか見ないなら標準のアクティビティモニタで足りるし、書き出しやビルドの最中に常に張り付いて見るなら、メニューバーに出しておく価値が出てくる。
費用を比べるときに見落としやすい点
有料の常駐アプリを選ぶ場合、金額だけを見ると判断を誤りやすい。iStat Menusの場合、日本から見える価格は税込で、単体が2,124円、家族向けの5人まで使える版が2,655円となっている。6系のライセンスを持っている人向けには割引があり、単体の乗り換えが1,770円、家族向けの乗り換えが2,301円である。この金額は2026年9月18日に日本から販売ページを開いて確認したもので、改定されることがある。
見落としやすいのは、ここに天気のデータが絡む点である。開発元の案内では、どのライセンスにも天気のデータが6か月分含まれると書かれている。天気を使わないなら関係しないが、使うつもりなら期間の区切りが来ることを頭に入れておきたい。月額のサブスクリプションに含まれる形で提供される経路もあり、そちらは月9.99ドルで250本以上のアプリがまとめて使える仕組みになっている。
もう1つ、買い切りを選ぶときに効いてくるのがメジャー版の区切りである。6.0から6.73まで6年以上更新が続いた実績があるので、1回の支払いで何年使えるかの目安は立てやすい。逆に言えば、次のメジャー版が出たときには改めて支払いが発生する前提で考えることになる。無料のものを選ぶなら費用の話は消えるが、対応macOSの下限が12以降である点と、不具合があったときの窓口が作り手の善意に依存する点は、比べる材料として押さえておきたい。
メニューバーに移した瞬間、別の混雑が始まる
Dashboardから乗り換えて数字をメニューバーに出すと、多くの場合その日のうちに次の問題にぶつかる。帯が足りない、という問題である。
CPU、メモリ、ネットワークの送受信、温度、バッテリーの4つか5つを並べると、それだけで横幅を相当に使う。そこへクラウドストレージ、チャット、パスワード管理、バックアップ、会議、入力の切り替えが加わると、合計で10個を超える。Appleの案内では、メニューバーの右側に並ぶこれらは状態を確かめるための項目だと説明されている。
Toward the right end of the menu bar are items (sometimes called status menus), typically represented by icons, that let you check the status of your Mac. 出典: support.apple.com
厄介なのは、並びきらなくなったときのmacOSの振る舞いである。あふれた分を折り畳んで見せる仕組みは用意されておらず、入らなくなったものは単に描かれなくなる。ノッチのあるMacBookでは、開いているアプリのメニューが長いときに、その分だけ右側の項目が押し出されて消える。消えたことを知らせる合図も出ない。
macOS側でできる範囲の手当ては2つある。1つはCommandキーを押しながらアイコンをドラッグして並び順を変えるか、帯の外へ放り出して消すこと。もう1つはメニューバーそのものを自動で隠す設定にして、カーソルを上端へ運んだときだけ出す形にすることである。どちらもAppleの案内に載っている。ただし前者は消す判断を毎回自分で下すことになり、後者は帯の幅そのものは増えない。
数字を出すアイコンは、この混雑の中でも特に幅を食う側に入る。単色の紋章1つで済む常駐アプリと違い、パーセントの数字や送受信の速度を文字で出す都合で、横に長くなるからである。項目を増やせばその分だけ他を押し出す。Dashboardの頃は全画面を使えたので気にする必要が無かった部分であり、乗り換えて初めて気づく人が多い。表示の形を文字から小さな折れ線へ切り替えるだけでも幅は縮むので、iStat MenusにもStatsにも用意されている表示形式の設定を一度見直しておきたい。
あわせて確かめておきたいのが、更新の間隔である。1秒ごとに数字を書き換える設定にすると、その分だけ常駐アプリ自身が負荷をかける。見たいのが「いま重いかどうか」であれば、2秒や5秒の間隔でも判断はできる。アクティビティモニタにも更新の頻度を変える項目があり、Appleの利用ガイドに手順が載っている。数字を見る道具が原因で数字が悪化する、という本末転倒を避けるための設定になる。
何を常に見せ、何を隠すかを決める
乗り換え先を決める作業は、結局のところ「常に見たい数字はどれか」を決める作業に落ちる。ここを曖昧にしたまま多機能なものを入れると、Dashboardの頃と同じ量の情報をメニューバーに詰め込もうとして失敗する。
仕分けの目安は3段階でよい。1つ目は、作業中ずっと目の端に入れておきたいもの。CPUの負荷やネットワークの送受信がここに入る人が多い。2つ目は、気になったときだけ押して確かめたいもの。ディスクの残量、温度、バッテリーの健康度などがこちらになる。3つ目は、動いていることさえ分かればよく、ふだんは見えなくてよいもの。バックアップやクラウドの同期がここに来る。
2つ目と3つ目を帯の上に出し続けているのが、混雑のいちばんの原因になっている。この2つを畳んでおければ、1つ目に選んだ数字は常に見える位置に残せる。そこで役に立つのがメニューバーを整理する道具で、できることには、隠したアイコンを本物の見た目のまま呼び出す仕組みと、隠したまま押してメニューを開く仕組みが説明されている。数字を出すアイコンは残量やグラフが絵柄そのものに出るため、呼び出したときに隠したアイコンを、メニューバーを畳んだまま押してその場でメニューを開けるかどうかが使い勝手を分ける。
同じ用途の道具は複数あり、無料のものから買い切りのものまで幅がある。価格と払い方を並べた表はほかの道具との違いにあり、調査日も添えられている。支払いが一度きりか継続かで数年後の総額が変わるので、料金で買い切りの範囲を確かめておきたい。導入時につまずきやすいのは権限の許可で、なぜアクセシビリティと画面収録の許可が要るのかはよくある質問に説明がある。対応するmacOSの下限や試用の条件を見たうえで手元で試す段になったら、ダウンロードから入手する流れになる。
決める順番をもう一度整理しておく。まず、Dashboardの部品は戻らないという前提を受け入れる。次に、見たい数字を3段階に仕分ける。そのうえで、標準のアクティビティモニタで足りるのか、メニューバーに常駐させるのかを選ぶ。常駐させると決めたなら、帯の混雑は必ず起きるので、何を畳むかを同時に決める。この順で進めると、名前を並べて比べるだけで終わる時間を短くできる。
よくある質問
iStat Proを今のMacに入れ直す方法はある?
無い。iStat ProはDashboardという入れ物の上で動く部品で、そのDashboardがmacOS 10.15 Catalinaで取り除かれている。対応していたのはMac OS X 10.4から macOS 10.14までなので、いまのmacOSには差し込む場所そのものが存在しない。同じ数字を見たい場合は、メニューバーに常駐する形のものへ移ることになる。
標準のアクティビティモニタだけで足りる?
週に数回しか数字を見ないなら足りる。Appleの案内では、CPUの動きをアクティビティモニタのウインドウで見るほか、Dockに折れ線として出せると説明されている。作業中ずっと目の端に置いておきたい場合は、メニューバーに常駐するものを入れたほうが手数が減る。
無料の選択肢と有料の選択肢はどこが違う?
無料で公開されているStatsはCPU、GPU、メモリ、ディスク、ネットワーク、センサーなどを扱い、MITライセンスでソースが公開されている。動作にはmacOS 12以降が要る。有料のiStat Menusは天気や通知の条件設定など扱う範囲が広く、日本から見える価格は税込2,124円である。扱う範囲と窓口の有無で選ぶことになる。
メニューバーに数字を出すと、他のアイコンが消えるのはなぜ?
macOSは横幅が足りなくなったとき、入りきらない項目を描くのをやめる。折り畳んで後から見せる仕組みは用意されていないため、消えたことを知らせる合図も出ない。ノッチのあるMacBookでは、開いているアプリのメニューが長いときに起きやすい。並び順を変えるか、ふだん見ないものを畳んでおくのが対処になる。