Itsycalの代わりを探すとき|手放してよい機能を先に決める
Itsycalの代わりを探している人の多くは、このアプリの出来に不満があるわけではない。メニューバーが常駐アプリのアイコンで埋まり、目的のものを探す時間が増えたので、並んでいるものを1つずつ見直している途中で日付表示にたどり着いた、という順序である。この記事は、乗り換え先を並べる前に、このアイコンが引き受けている仕事を分解し、どれを手放してよいかを先に決めるための材料をまとめたものである。
1つのアイコンに、別々の仕事が5つ載っている
公式サイトが挙げている機能を性質で分けると、少なくとも5つの独立した仕事が同じアイコンの下に同居している。代わりを探すという作業が難しくなるのは、この5つを1つの塊として扱おうとするからである。
- メニューバーに日付を出す。アイコンの形を選び、その右に任意の文字列を置ける
- クリックすると月のカレンダーが開く。2か月を並べて表示できる
- Macのカレンダーappに登録した予定を、カレンダーの下の欄に一覧する
- 予定を新しく作る。予定に含まれるオンライン会議のリンクを検出して参加ボタンを出す
- ISO 8601の週番号を出す。毎時のビープを鳴らす。キーボードだけで日付を動かす
このうち、どれを日常的に使っているかは人によってはっきり分かれる。メニューバーの文字列だけを見ていて、カレンダーを開くのは月に数回という使い方もあれば、会議の参加ボタンを毎日押している使い方もある。前者にとっては、このアプリは5つの仕事のうち1つしか使っていない常駐アプリということになる。
代わりを探すという言い方は、この5つをまとめて別の何かに移す前提になっている。実際には、使っている仕事だけを別の場所に移して、残りは手放すという選び方のほうが、メニューバーの幅にも作業の手数にも効く。
手放してよい機能から決める
順番を逆にする。「何に乗り換えるか」ではなく「何を手放せるか」から決めると、選択肢がかなり減る。判断の目安は、その仕事がmacOS自身の機能で足りるかどうかである。
日付の表示は、macOS標準のメニューバー時計でも曜日と日付を出せる。システム設定のコントロールセンターにある時計の項目で、表示内容を切り替えられる。ここで足りるなら、日付表示のためだけに常駐アプリを置く理由は小さくなる。
月のカレンダーを開く操作は、通知センターに置いたカレンダーのウィジェットや、カレンダーapp自体でも代わりになる。ただし、通知センターは開くまでに一手多い。1日に何度も開くなら差が出るが、週に数回なら差は小さい。
予定の一覧も同じ場所で見られる。手放しにくいのは、会議のリンク検出と参加ボタン、ISO 8601の週番号、キーボードだけで日付を動かす操作の3つである。この3つは、macOS標準の機能に同じものが無い。
| 仕事 | 手放しやすさ | 代わりになる場所 |
|---|---|---|
| メニューバーの日付表示 | 高い | macOS標準のメニューバー時計 |
| 月のカレンダーを開く | 高い | 通知センターのウィジェット、カレンダーapp |
| 予定の一覧 | 中くらい | カレンダーapp |
| 会議への参加ボタン | 低い | 同等のものは標準に無い |
| ISO 8601の週番号 | 低い | 標準の時計では扱いが異なる |
| キーボードでの日付移動 | 低い | 同等のものは標準に無い |
この表で「低い」に入るものを1つも使っていないなら、代わりのアプリを探す作業自体が不要である可能性が高い。逆に「低い」に入るものを毎日使っているなら、代わりを探す条件はかなり絞られる。
「低い」に入る機能の中身を確かめる
手放しにくいと書いた3つは、どれも説明が短いと価値が伝わりにくい。代わりを探す条件を決めるために、中身を具体的に見ておく。
キーボードでの日付移動は、vimの操作をそのまま持ち込んだ作りになっている。公式のヘルプによれば、H と L で前後の日、K と J で前後の週、⇧H と ⇧L で前後の月、⇧K と ⇧J で前後の年に動く。しかも回数を先に打てる。5 に続けて上向きの矢印なら5年前に戻り、21 に続けて L なら21日先に進む。スペースキーで今日に戻り、⇧⌘T で任意の日付に飛べる。この操作に慣れていると、マウスで月をめくる動作には戻りにくい。
会議への参加は、予定の中のリンクを検出して出るボタンで行う。更新履歴を見ると、対応する会議のサービスは少しずつ足されていて、Zoom、Chime、jit.si、FaceTime、Workplaceなどの名前が並んでいる。⌘J を押すと、一覧の中で有効になっている最初の会議に参加できる。開くためのショートカットと組み合わせると、マウスに触れずに会議へ入れる、という説明が更新履歴に書かれている。
ISO 8601の週番号は、業務で週の番号を使う人にとってだけ効く機能である。使っていなければ考える必要は無い。使っているなら、代わりの候補が同じ規格に沿っているかを個別に確かめることになる。
この3つのどれにも当てはまらないなら、代わりの候補は一気に広がる。逆に当てはまるなら、価格や見た目より先にこの条件で候補を絞ったほうが早い。
乗り換えで引き継げるもの、引き継げないもの
このアプリを外すときのコストは、想像より小さい。理由は、アプリ自身が予定のデータを持っていないからである。表示している予定はMacのカレンダーappに入っているもので、公式のヘルプも、カレンダーappで設定したカレンダーの中から表示するものにチェックを入れる仕組みだと説明している。アプリを消しても、予定が消えることはない。
一方で、引き継げないものは全部が設定である。具体的には次のものが、乗り換え先ではゼロから作り直しになる。
- メニューバーに出す日時のパターン。時刻の書式や、アイコンを隠して文字だけにする設定
- アイコンの種類。塗りつぶし、輪郭だけ、汎用のカレンダーの絵柄などの選択
- 開くためのキーボードショートカットの割り当て
- 表示するカレンダーのチェック。カレンダーappに多くのカレンダーがある環境ほど手間になる
- ターミナルから入れた隠し設定。文字の位置の調整や、会議ボタンを出し続ける設定などが該当する
- 毎時のビープ用に置いた音声ファイル。公式のヘルプによれば
~/Library/Application Support/com.mowglii.ItsycalAppにbeep.mp3を置く仕組みになっている
数にすると多くはないが、日時のパターンとカレンダーのチェックは、乗り換え先の画面を見ながら作り直すことになる。移行前にいまの設定を画面で控えておくと、この作業が短くなる。
置き換え先の事実を並べる
比較の材料として、2026年9月10日に各公式ページで確認した内容を並べる。価格と対応するmacOSの版は変わることがあるので、決める直前に公式ページを見るのが確実である。
| 名前 | 提供の形 | 価格 | 必要なmacOS |
|---|---|---|---|
| Itsycal | 開発者サイトから配布。Homebrewのcaskあり | 無料。寄付は任意 | macOS 11以降 |
| Dato | App StoreとSetapp | 日本のApp Storeで3,000円(米国では18ドル)の買い切り | macOS 26以降 |
| Fantastical | Flexibitsのサイトから配布 | 無料のプランあり。上位機能は月額または年額の購読 | 公式の対応表を参照 |
| macOSの時計とカレンダーapp | macOSに同梱 | 追加費用なし | 使用中のmacOS |
Itsycalの開発者は、自分のアプリについて次のように書いている。
My apps are free. If they're useful to you and you're feeling generous, I've set up some ways to donate. 出典: mowglii.com
つまり無料での配布が前提で、寄付は任意という形である。購読でも買い切りでもないため、価格改定という形の変化は起きにくい。代わりに、対応するmacOSの版が上がる形で変化が起きる。
Datoは3,000円の買い切りだが、公式ページの記載ではmacOS 26以降が必要である。古いmacOSを使い続けている環境では、価格ではなくこの条件で選べなくなる。乗り換え先を比べるときは、価格の欄より先にこの欄を見たほうが早い。
終了、新規受付、運営、料金の4点を先に確かめる
道具を選び直すとき、機能表を見比べる前に確かめると無駄が減る点が4つある。提供が終わっていないか、新規の配布や受付が止まっていないか、運営が変わっていないか、料金の形が変わっていないかである。この4点は、機能表には書かれない。
Itsycalについて2026年9月10日に確認した範囲では、次の状態だった。
- 提供は続いている。公開されている更新履歴の最新は0.15.12で、macOS 26に向けた修正が並んでいる
- 新規の配布も続いている。公式サイトからのZIPのほか、Homebrewのcaskとしても配布されている
- 運営は個人のまま。開発者本人のサイトで配布されている
- 無料のまま。寄付は任意という説明が続いている
版の要件については、更新履歴に明記がある。
This release requires macOS 11 (Big Sur) or higher. 出典: mowglii.com
この記述は0.15.0の項目にある。同じページには、古いmacOS向けの旧版も並んでいる。macOS 10.14以降なら0.14.1、10.12以降なら0.11.17、10.10以降なら0.10.16、10.8以降なら0.8.15が用意されている。macOSを上げられない機種で動かしたいなら、代わりのアプリを探すより、旧版を選ぶほうが目的に近いことがある。ただし旧版は更新が止まっているため、新しいmacOSでの不具合修正は入らない。
メニューバーの幅という制約から選ぶ
代わりを選ぶ基準として見落とされやすいのが、メニューバーで占める幅である。日付と曜日と時刻を並べる設定にすると、アイコンだけのときより横に長くなる。メニューバーの容量は画面の幅で決まっていて、右から並んだ項目が左側のアプリメニューにぶつかると、そこから先は表示されない。MacBookのノッチがある機種では、この限界が早く来る。
やっかいなのは、表示できなかった項目に何の印も出ない点である。公式のヘルプも、メニューバーが埋まるとmacOSが場所を確保できない項目を黙って隠すと説明している。アプリは動いているのにアイコンが見えないという状態は、この容量の問題として起きる。代わりのアプリに移った直後に「アイコンが出ない」となる場合、多くはアプリの不具合ではなく幅の問題である。
ここから逆算すると、選び方は2つに分かれる。文字数を減らして幅を節約する方向と、幅の問題そのものを別の道具で解く方向である。後者を選ぶ場合、メニューバーを整理する道具の中には、隠したアイコンを、メニューバーを畳んだまま押してその場でメニューを開けるものがある。この場合、日付を出すアプリを乗り換える必要そのものが消えることがある。
判断を1枚にまとめる
ここまでの内容を、決める順番に並べ直す。
まず、使っている仕事を数える。メニューバーの文字列だけなら、macOS標準の時計で足りるかを試す。試すのは無料で、元に戻すのも設定を戻すだけである。次に、会議の参加ボタン、ISO 8601の週番号、キーボードでの日付移動のどれかを使っているかを確かめる。使っているなら、代わりの候補はかなり絞られる。
そのうえで、対応するmacOSの版を見る。価格より先にここで落ちる候補がある。最後に、幅の問題が本体だったのかを確かめる。アイコンを探す時間が長いという不満なら、日付アプリの入れ替えでは解決しないことが多い。
道具の選び方の全体像はほかの道具との違いにまとめてあり、メニューバーの項目を隠したまま操作する仕組みについてはできることで扱っている。費用の考え方は料金、導入前に出やすい疑問はよくある質問、実際に手元で試す場合の入手先はダウンロードにある。手放す機能を決めてから読むと、必要な項目だけを見て済む。
よくある質問
Itsycalを削除すると、登録した予定も消えますか?
消えません。表示している予定はMacのカレンダーappに保存されていて、このアプリはそれを読んで表示しているだけです。アプリを削除しても、カレンダーappを開けば予定はそのまま残っています。ただし、メニューバーの日時の書式や表示するカレンダーのチェックなどの設定は残らないため、再導入するときは作り直しになります。
古いmacOSでも使えますか?
最新版はmacOS 11以降が必要です。公式の更新履歴のページに、古いmacOS向けの旧版が並んでいます。macOS 10.14以降なら0.14.1、10.12以降なら0.11.17、10.10以降なら0.10.16、10.8以降なら0.8.15が入手できます。旧版は更新が止まっているため、新しいmacOSでの不具合修正は入らない点に注意してください。
有料の代わりを選ぶときは、どこを先に見ればよいですか?
価格より先に、必要なmacOSの版を見てください。買い切りで手が届く価格でも、対応するmacOSの条件で選べないことがあります。たとえばDatoは日本のApp Storeで3,000円の買い切りですが、公式ページの記載ではmacOS 26以降が必要です。次に、提供が続いているか、料金の形が変わっていないかを公式ページで確かめると無駄が減ります。
メニューバーのアイコンを探すのに時間がかかるのが不満です。日付アプリを替えれば解決しますか?
その不満が幅の問題から来ているなら、日付アプリを替えても変わりにくいです。メニューバーに入る項目の数は画面の幅で決まっていて、入りきらない項目は印も出ずに表示されなくなります。まず、常駐している項目のうち普段押していないものを数えてください。数が多いなら、1つを入れ替えるより、隠す仕組みを入れるほうが効きます。