オープンソースのメニューバー整理アプリをMacで選ぶ判断材料
メニューバーがアイコンで埋まってきたときに、オープンソースの整理アプリを探し始める理由は、だいたい2つに分かれます。アイコンを畳むだけの機能に費用をかける判断がつかないか、画面の上端を常時見ている常駐アプリのソースが読めないことに引っかかるか、のどちらかです。どちらも妥当な出発点ですが、行き着く先は同じではありません。この記事では、公開されているリポジトリの情報をもとに、候補を絞り込むための判断材料を整理します。
オープンソースであることが、この種の常駐アプリで何を意味するか
メニューバー管理アプリは、常駐アプリの中でも扱いが特殊です。ステータス項目を隠したり戻したりするには、常に背後にいて、メニューバーに何が並んでいるかを把握し、多くの設計では利用者に代わって項目を動かす必要があります。画像変換のような単発の道具に比べると触れる範囲が広く、この分野でソースの公開が話題になりやすいのはそのためです。
オープンソースであることが確実に与えるものは2つあります。1つは検証できること。コードが公開リポジトリにあるので、読める人が挙動を確認でき、報告された不具合のやり取りも外から見えます。もう1つは継続性です。作者が手を止めても、コードを引き継いで別の人が続けられます。この分野で複数の選択肢が並んでいるのは、実際にその引き継ぎが起きてきたからでもあります。
一方で、思い込みやすいわりに保証されていないことも3つあります。まず、公開されていることと、いま手入れされていることは別です。リポジトリは何年でも静止していられます。次に、読んだソースからその配布バイナリが作られた保証は、自分でビルドしない限りありません。そして、求める許可がオープンソースだから少ない、ということもありません。許可の重さを決めるのは機能の中身であって、コードのライセンスではないためです。
つまりオープンソースはコードの性質であって、製品としての約束ではありません。判断材料の1つとして扱い、残りの材料と並べて見るのが妥当な使い方になります。
主な選択肢と、どこで分かれるか
この分野で繰り返し名前が挙がるのは3つのプロジェクトです。以下は各リポジトリの公開情報にもとづく整理です(確認日は2026年9月5日)。
| プロジェクト | リポジトリ | ライセンス | 対応するmacOSの下限 |
|---|---|---|---|
| Ice | jordanbaird/Ice | GPL-3.0 | macOS 14 |
| Hidden Bar | dwarvesf/hidden | MIT | macOS 13 |
| Dozer | Mortennn/Dozer | MPL-2.0 | macOS 10.13 |
実際に候補を絞るのは、いちばん右の列です。しかも手元の機材によって、絞られる方向が逆になります。
Iceは3つの中で下限がいちばん高く、macOS 14以降で導入されたシステム側の仕組みに依存しており、それ以前のバージョンに対応する予定はないと説明されています。これは対応の遅れではなく設計上の選択です。新しい仕組みを使えるほど、古い道具が必要としていた回避策を減らせるためです。手元のMacが新しいバージョンで動いているなら、この下限は制約になりません。
Hidden BarはmacOS 13のVentura以降が必要で、リポジトリにはバージョン1.10がmacOS 12 Monterey までを含む古い環境に対応する最後のリリースだと記載されています。Mac App Storeのほか、Homebrewや直接のダウンロードでも配布されており、導入経路の選択肢は3つの中で最も多くなっています。
Dozerの下限はmacOS 10.13で、3つの中で大きく低い位置にあります。古いバージョンから動かせないMacがある場合、この一点だけで選択が決まることもあります。ただし下限が低いプロジェクトを入れる前には、リポジトリを開いて直近のコミットとリリースの日付を確認しておくことをおすすめします。下限の低さと、最後のリリースからの間隔の長さは、同時に現れることが少なくないためです。
ライセンスの違いが効いてくる場面
メニューバーを整理したいだけの利用者にとって、MITとMPL-2.0とGPL-3.0は事実上同じです。3つとも、無料で入手して、仕事を含む用途で使うことを認めています。この3つの中に、ふつうの利用者へ何かを要求するライセンスはありません。
違いが出るのは、コードに手を入れて配る段階です。MITは最も緩く、改変して独自の製品に組み込んで配ることまで認め、求めるのは著作権表示を残すことだけです。MPL-2.0は中間で、そのプロジェクト自身のファイルへの変更は公開する必要がありますが、独自のコードと組み合わせても独自のコード側までライセンスが及ぶわけではありません。GPL-3.0は最も強く、配布する派生物も同じGPL-3.0で公開することを求めます。
この差が実務に届く場面は、実は1つに絞れます。社内で使う道具に法務の確認が入る組織では、配る前提での義務が発生するGPL-3.0について、確認に時間がかかることがあります。良し悪しではなく、確認の量の違いです。個人のMacに入れて自分で使うだけなら、3つのどれでも手続きは発生しません。
Macに求める許可と、配布経路
ここはオープンソースでも有料の道具でも条件が同じで、実際の負担がいちばん大きい部分です。
メニューバーを操作するには、この種のアプリは特権的な許可を少なくとも1つ必要とします。アクセシビリティの許可は、ほかのアプリの画面上の要素を観察して操作することを認めるもので、項目を動かしたり押したりするのはこの権限です。画面収録の許可は、画面に映っている内容を読み取ることを認めるもので、いま何が並んでいて幅がどれだけかを検出する設計で使われます。この2つは同じものではありません。前者は操作、後者は画面全体を見ることに関する許可で、ほかのウインドウの中身も対象に入ります。
導入前にすべきことは単純です。プロジェクトの説明を開き、どちらの許可を求めているのか、その理由が書かれているかを確かめる。理由を自分の文書で説明している時点で、判断材料が1つ増えます。許可を与えたあとも、システム設定のプライバシーとセキュリティに一覧が出るので、アプリを消さずに取り消せます。
配布経路も見ておく価値があります。Mac App Store版はサンドボックスの中で動くため、ほかのアプリに対してできることに制限がかかります。直接ダウンロードする版はサンドボックスの外で動き、そのぶん実現できる機能がありますが、署名と公証が済んでいないとmacOSがそのままでは開きません。どちらが安全というより、詰まり方が違うと考えるほうが正確です。
どの道具にもできないこと
比較を始める前に、この分野の共通の天井を知っておくと時間が節約できます。期待されがちなのに、オープンソースでも有料でも実現していないことがいくつかあります。
- 隠したアプリの処理は減りません。画面外に退避した項目のアプリは動き続けており、電池もメモリも従来どおり使います。変わるのは画面上端が要求してくる注意の量だけで、動作が軽くなるわけではありません
- すべての項目を自由に並べ替えられるわけではありません。システム側の一部の項目は右端側に位置を保ち、あとから入れたアプリはその左に並びます。整理アプリはこの順序の中で働きます
- 前面のアプリが取った幅は取り返せません。メニューの本数が多いアプリを出せば左側が伸び、ステータス項目に残る幅は減ります。隠すのはその結果への対応であって、原因を止める手段ではありません
- システム側の変更に対して自動的に強くはなりません。macOSの更新のたびに、項目の並び方や観察できる範囲が変わり得ます。リリースの間隔がリポジトリで最も情報量の多い数字なのは、このためです
なお、標準機能だけでできる範囲も確認しておくと、道具に何を任せるかがはっきりします。Appleは並べ替えと取り外しの操作を次のように説明しています。
To rearrange status menus, press and hold the Command key while you drag an icon. To quickly remove a status menu, press and hold the Command key while you drag the icon out of the menu bar. 出典: support.apple.com
Commandキーを押しながらドラッグすれば並べ替えができ、バーの外へドラッグすれば外せる、という内容です。ただしこれは並び順を変えるだけで、隠して必要なときに戻す動きは標準では用意されていません。そこが道具の担当する範囲になります。
選ぶ前に確かめる4点
機能の一覧を読み比べるより、次の4点を見るほうが早く絞り込めます。
- リポジトリの最後のリリース日と最後のコミット日。星の数ではありません。macOSの更新ごとに前提が変わる分野なので、直近のメジャーアップデートに合わせて更新が出ているかどうかが実質的な指標になります
- 対応するmacOSの下限と、手元でいちばん古いMacの組み合わせ。古い機材が1台あるだけで候補が半分になります
- 求めている許可と、その理由。説明に書かれていなければ、issueのやり取りに書かれていることが多い部分です
- 1週間ほど、ほかを変えずに使ってみて、隠した項目を探しに行った回数
最後の1つが実は最も差が出ます。探しに行った回数が多いなら、問題は隠す機能ではなく、隠したあとに届くかどうかです。
道具側の情報から何が分かるか
この分野の差は、隠す動作そのものにはほとんど現れません。どの道具もアイコンを畳みますし、基本的な畳み方は大きく変わりません。差が出るのはその1つ上の層です。
見るべき点は次のあたりに集約されます。隠したアイコンを、メニューバーを畳んだまま押してその場でメニューを開けるかどうか。これが1日の操作回数を左右します。あふれた項目をメニューバーの下にもう1段作って並べられるかどうかは、カメラ部分でバーが割られるMacBookで効いてきます。アプリごと、ディスプレイごとに扱いを変えられるか、一定時間で自動的に畳み直すか、OSの更新後に設定が残るかは、1週間使ってようやく見える種類の項目です。どの動作に対応しているかはできることで条件ごとに整理しており、ほかの選択肢との違いはほかの道具との違いに事実ベースで並べています。
費用の形も判断材料に含めておくと、あとから揺り戻しが起きません。無料か、買い切りか、継続課金かで、更新が続く仕組みが変わります。オープンソースは維持する人の時間で支えられており、有料の道具は費用で支えられている、という違いがあるだけで、どちらが上ということはありません。判断が必要なのは抽象的な優劣ではなく、自分が毎日触る機能で2つの候補を比べたときにどちらが勝つか、という具体的な比較です。よくある疑問への回答はよくある質問にまとめてあり、実際に1週間試す段階になったらダウンロードから始められます。
よくある質問
オープンソースなら、アクセシビリティの許可を与えても安全?
コードが検証できる点は確かな利点ですが、許可そのものが与える権限の範囲はライセンスによって変わりません。プロジェクトが説明している要求理由が機能の内容と合っているかを確かめ、与えたあとはシステム設定のプライバシーとセキュリティからいつでも取り消せることを覚えておくのが実際的です。
古いMacでも動くオープンソースの選択肢は?
よく名前が挙がる3つでは、Dozerが下限をmacOS 10.13としていて最も低く、Hidden BarはmacOS 13のVentura以降、IceはmacOS 14以降です。ただし下限の数字だけでなく、リポジトリの直近の更新状況もあわせて確認してください。下限が低いプロジェクトは、最後のリリースから間隔が空いていることがあります。
ライセンスの違いは、ふつうに使う分に影響する?
影響しません。MIT、MPL-2.0、GPL-3.0のいずれも、仕事を含む用途で無料で使うことを認めています。違いが出るのは改変して配布する段階で、GPL-3.0は派生物も同じライセンスでの公開を求め、MPL-2.0はそのプロジェクトのファイルへの変更の公開を求め、MITは著作権表示を残すことだけを求めます。
無料の道具は有料のものよりアイコンを隠す性能が低い?
隠す動作そのものは大きく変わりません。差が出るのはその上の層で、畳んだまま隠れたアイコンを押せるか、あふれた分を下の段に並べられるか、アプリやディスプレイごとに扱いを変えられるか、といった点です。価格ではなく、自分が毎日使う動作で比べるほうが判断を誤りません。