Bartenderから乗り換えるときに引き継げるもの、引き継げないもの

メニューバーを整理する道具を乗り換えるのは、文書作成ソフトを乗り換えるのとは性質が違う。文書ならファイルがそのまま持ち出せて、覚え直すのは操作方法だけで済む。ところがメニューバーの設定は、何か月もかけて少しずつ決めてきた細かい判断の集まりで、どこかにファイルとして置かれているわけではない。どのアイコンを見せて、どれをしまい、どれを完全に隠すか。その上にショートカットと条件が重なっている。乗り換えたときに「設定が消えた」と感じるかどうかは、何が移って何が移らないかを事前に知っていたかで決まる。なお本記事の内容は2026年9月5日時点で確認した仕様に基づく。

設定が持ち出せないのは、置き場所と形式がアプリごとに違うから

常駐アプリの設定は、そのアプリ自身の形式で、そのアプリ自身の場所に保存される。表計算のファイルのように、別のソフトが開ける共通の形になっているわけではない。だから乗り換え先が古い側の設定を読むには、乗り換え先が古い側の形式を理解する処理を持っている必要がある。

そのうえで、読み取れたとしても意味が通じるとは限らない。ここが乗り換えの本質的な難しさになる。たとえば「このアプリは隠す」という判断は、隠す場所と見せる場所という考え方を持つ道具どうしなら同じ意味で通じる。一方で「Controlキーとスペースキーで隠した側を出す」という設定は、そのアプリ独自の命令に結びついているので、そのまま別のアプリの命令には置き換わらない。条件やトリガーも同じで、条件を書くための仕組みそのものがアプリごとに違う。

つまり、移せるものと移せないものの境目は、誰かが手を抜いたから生まれているのではない。共通の意味を持つ部分だけが移り、そのアプリの内側でしか意味を持たない部分は残る。この区別が分かっていれば、乗り換えのあとで何を触ればよいかも自然に決まる。

引き継げるのは3つの分類

Bartenderは、メニューバーに出ている項目を3つの分類に振り分ける仕組みを持っている。表示(Show)、非表示(Hide)、常時非表示(AlwaysHide)の3つだ。乗り換え先が設定の読み込みに対応している場合、この3つの分類がそのまま乗り換え先の同じ3つのゾーンへ対応づけられる。

これは見た目より価値のある部分だ。メニューバーに項目が25個あるなら、その分類は25回分の判断の記録にあたる。どれを毎日押していて、どれは見えているだけでよくて、どれは存在すら忘れていてよいのか。手で入れ直しても難しくはないが、単調で、途中で飽きたところで手が止まる。中途半端に並んだメニューバーができあがるのは、たいていこの工程が原因だ。

引き継がれる内容を正確に書くと、次の3点になる。

  • Bartenderの3つの分類そのもの。表示、非表示、常時非表示が、乗り換え先の同じ3つのゾーンに対応する
  • 対応付けはアプリ単位で行われる。アプリを識別する情報(バンドルID)を手がかりにするため、いまメニューバーに出ている項目のうち、そのアプリのものはすべて同じゾーンに入る
  • 読み込む対象は、Bartenderの設定のうち、いま有効になっているプロファイル1つ

引き継がれるのはここまでだ。これ以外は作り直しになる。

引き継げないもの

以下は読み込まれない。先に知っておくと、乗り換え後の印象がまったく変わる。

有効なプロファイル以外のプロファイル。 Bartenderで複数のプロファイルを作って場面ごとに切り替えている場合でも、読み込まれるのはいま有効な1つだけだ。ほかのプロファイルは移らない。読み込む前に、自分が主に使っているプロファイルへ切り替えておくとよい。読まれるのがそれになる。

キーボードショートカット。 隠した側を呼び出すためのキーの組み合わせは、乗り換え先で設定し直す。

条件やトリガー。 電池残量、時間帯、前面にあるアプリなどをきっかけに項目を出し入れする設定は読み込まれない。この仕組みに頼った設定を組んでいた場合、ここが一番手のかかる部分になる。

アイコンの間隔や見た目の設定。 アイコンどうしの間隔などの調整は引き継がれない。

同じアプリが複数のアイコンを出している場合の、アイコンごとの振り分け。 対応付けがアプリ単位なので、1つのアプリが2つのアイコンを出していても、両方が同じゾーンに入る。片方だけ見せて片方を隠す、という分け方をしていた場合、その区別は残らない。

最後の1つは気づきにくい。読み込み直後に画面を見ていなければ、しばらく経ってから「なぜこのアイコンがここに」と思うことになる。直すのは一瞬だが、起きうると知らなければ探しにも行かない。

対応付けがアプリ単位であることの意味

アプリ単位で対応づけるということは、読み込みの結果が「読み込んだ瞬間に何が動いていたか」に左右されるということでもある。インストールはされていても起動していないアプリは、メニューバーに項目を出していないので、振り分けの対象にならない。

そのため、読み込む前にひと手間かけておく価値がある。再起動直後の、数個しかアプリが動いていない状態ではなく、ふだんの仕事中と同じ状態にしておく。メールの常駐アプリ、チャット、バックアップ、通信の切り替え、いつもメニューバーにいるものを一通り起動してから読み込む。出ていた項目は振り分けられ、出ていなかった項目は何も指定されないまま残る。

逆に、もう使っていないアプリが古い設定に残っていても、動いていなければ何も起きない。乗り換えは、そういうアプリを消す機会としても都合がよい。

読み込みと反映は別の操作

ここは知らないと失敗したように見えるので、はっきり書いておく。

設定の読み込みに対応した道具では、設定画面に「Bartenderの設定を引き継ぐ」に相当する行が現れる。逆に、そのMacにBartenderの設定が見つからない場合、この行そのものが出ない。つまり項目が見当たらないなら、読み込む元が無いということだ。

読み込みを実行すると設定が読まれ、何件を振り分けたかが表示される。この時点では画面上のメニューバーはまだ変わらない。振り分けの結果が記録されただけで、実際の並びには適用されていない。

適用するのは、そのあとの別の操作になる。「メニューバーに反映」に相当する操作を行うと、そこで初めて並びが変わる。読み込んだのに何も起きない、と感じるのはこの2段構えが理由で、不具合ではない。

例外も2つある。Bartenderで隠しているアイコンが1つも無い場合は、その旨が表示されて何も変更されない。引き継ぐべき分類が存在しないからだ。もう1つ、乗り換え先の道具自身のアイコンは対象外になっている。自分自身を隠してしまわないための扱いだ。

何を作り直すかを一覧にしておく

設定 引き継がれるか 作り直す場所
表示・非表示・常時非表示の3分類 引き継がれる 作業なし
有効でないプロファイル 引き継がれない 読み込む前に主なプロファイルへ切り替える
呼び出しのキーボードショートカット 引き継がれない 乗り換え先のショートカット設定
条件やトリガー 引き継がれない 乗り換え先の条件設定で一から
アイコンの間隔や見た目 引き継がれない 乗り換え先の表示設定
同じアプリの2つ目のアイコン 引き継がれない 反映後に手で移動する

この表を先に読んでおくと、乗り換えが「終わりの見えない片づけ」ではなく、範囲の決まった短い作業になる。1行目だけが過去の判断を引き継ぐ部分で、それ以外はどれも記憶から数分で書き直せる程度の設定だからだ。

条件とショートカットは、作り直すより見直す

条件は、そのまま復元しようとしないほうがよい。1年前に書いた条件が、いまも必要とは限らないからだ。

現実的な進め方はこうなる。まず読み込んで反映し、条件を1つも設定しないまま数日使う。多くの場合、以前の条件のうち2つか3つは、表示と非表示を分ける基本の仕組みだけで足りていたことが分かる。その状態で使ってみて、それでも不便だと感じたものだけが、書き直す価値のある条件だ。

ショートカットはもっと単純でよい。隠した側を呼び出すキーを1つ決めて、1週間使う。足りないと感じたときに増やせばよい。以前いくつも登録していたショートカットの多くは、呼び出しが1つあれば済む用事だったと気づくことが多い。

呼び出し方そのものも、道具によって考え方が違う。隠したアイコンを、メニューバーを畳んだまま押してその場でメニューを開ける作りになっていれば、そもそも全部を出し直す場面が減るので、必要なショートカットの数も減る。移行前の設定をそのまま再現するのではなく、乗り換え先の作りに合わせて組み直すほうが、結果として設定は軽くなる。

古い側はいつ消すか

古い道具は、新しい設定が普通の1週間を乗り切るまで残しておく。早く消しても得るものは無く、残しておけば「以前はこの項目をどう分類していたか」を確認できる。

一方で、両方を有効な管理役として動かし続けるのは移行に必要な期間だけにする。同じ項目を2つの道具が同時に並べ替えようとすると衝突し、どちらかが壊れているように見える。読み込み、反映、そのうえで古い側を止める、という順番にする。

判断の基準としては、再起動を1回はさむことを目安にするとよい。反映した直後は、動いていたアプリがそのまま動いているので、どんな設定でも正しく見える。設定の穴が出るのは、次に電源を入れ直したときだ。アプリがアイコンを登録する順番が変わるからで、ここを通過するまでは判断を保留したほうがよい。

乗り換え先を選ぶときに見るところ

Appleは、メニューバーに表示する項目のうちmacOS自身のものについては、システム設定から表示の扱いを選べるようにしている。

Appleは、メニューバーに表示する項目をシステム設定の「コントロールセンター」から選べるようにしており、項目ごとに常に表示するか、使用中だけ表示するか、表示しないかを切り替えられると案内している。 出典: support.apple.com

ただしこの仕組みで扱えるのはmacOS自身の項目だけで、あとから入れたアプリのアイコンは対象にならない。乗り換え先の道具を選ぶ意味はここにある。

何ができる道具なのかはできることで確認できる。隠す、畳む、隠したまま押す、といった動作の違いがそこに整理されているので、いま使っている条件やショートカットに相当する仕組みがあるかを、作り直しに入る前に見ておくとよい。

道具どうしの違いは、値段と対応するmacOSのバージョンと提供の形で分かれる。ほかの道具との違いにその並びがある。乗り換えの判断は、機能の数より先にこの2点で決まることが多い。

費用の考え方は料金にまとまっている。買い切りか継続課金かは、何年使うつもりかで損得が入れ替わるため、金額そのものより支払いの形を先に見たほうがよい。

権限の設定、ログイン時の自動起動、ほかの常駐アプリとの併用といった、入れてから気づく種類の疑問はよくある質問に集まっている。実際に試すところまで進むならダウンロードから入手できる。

乗り換えで最初にやることは決まっている。Bartenderを開いて、いま有効なプロファイルが自分の主な設定になっているかを確かめ、ふだん動かしているアプリを一通り起動する。そのうえで読み込み、件数を確認し、反映する。ショートカットを1つ設定して、条件はしばらく空のままにしておく。この順番なら、乗り換えの途中でメニューバーが壊れて見える時間はほとんど無い。

よくある質問

Bartenderの設定は全部引き継げる?

引き継げるのは表示・非表示・常時非表示の3つの分類だけで、しかもいま有効なプロファイル1つ分に限られます。キーボードショートカット、条件やトリガー、アイコンの間隔などの見た目の設定、ほかのプロファイルは読み込まれません。これらは乗り換え先で設定し直す前提で進めてください。

複数のプロファイルを使い分けている場合はどうなる?

読み込まれるのは、読み込みを実行した時点で有効になっているプロファイル1つだけです。ほかのプロファイルは引き継がれません。読み込む前にBartender側で、自分が主に使っているプロファイルへ切り替えておくと、意図した設定が読まれます。

読み込んだのにメニューバーが変わらないのはなぜ?

読み込みと反映は別の操作だからです。読み込みでは設定を読んで何件を振り分けたかが表示されるだけで、メニューバーはまだ変わりません。そのあとの反映の操作で初めて並びが変わります。反映しても変化が無い場合は、Bartender側で隠しているアイコンが1つも無かった可能性があります。

乗り換え中もBartenderを残しておいていい?

新しい設定が普通の1週間を乗り切るまでは残しておくほうが安全です。以前の分類を確認できます。ただし両方を有効な管理役として長く動かし続けるのは避けてください。同じ項目を2つの道具が同時に並べ替えようとして衝突します。読み込んで反映したら、古い側は止めます。

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