Macのゲストユーザー|人に貸すときに自分の設定を見せない
Macのゲストユーザーは、人に短時間貸すために用意された仕組みである。パスワードを教えずに使わせられて、終われば痕跡が消える。ただし、消えるものと消えないもの、できることとできないことの線引きがはっきりしているので、そこを知らずに貸すと困る場面が出る。この記事では、有効にする手順と、FileVaultが関わる制限、ログイン画面に勝手に表示される場合の見分け方を順番に整理する。
ゲストユーザーは「一時的な貸し出し」専用の枠
まず位置づけを押さえておきたい。Macのアカウントには管理者、通常、共有のみの3つの種類があり、ゲストユーザーはそれとは別にあらかじめ1つだけ用意されている枠である。新しく作るものではなく、既にあるものを有効にするか無効にするかを選ぶ形になっている。
Macの管理者である場合は、「ユーザとグループ」設定を使用して、ほかの人を個々のユーザとして追加せず、ゲストユーザとして一時的に自分のMacを使用することを許可できます。 出典: support.apple.com
通常ユーザーを追加する場合との違いは3つある。パスワードを設定しないこと、設定の変更ができないこと、そしてログアウトすると作ったファイルが消えることである。つまり、繰り返し使う相手のために用意する枠ではない。家族が毎日使うなら通常ユーザーを追加するほうが向いている。
逆に向いている場面は次のようなものである。来客に少しブラウザを使わせる、修理や設定作業のために短時間だけ渡す、共有の会議室のMacで誰でも触れる状態にしておく。共通しているのは、その人のデータを残す必要がない点である。
もう1つ、紛失したときの話がある。Appleの案内では、ゲストアクセスは「探す」アプリと連係しており、Macを拾った人がゲストとしてログインしてSafariでインターネットに接続すると、Macの位置が分かるとされている。持ち出すMacで有効にしておく理由が、ここにも1つある。
有効にする手順と、3つの選択肢の意味
設定はシステム設定の「ユーザとグループ」にある。アップルメニューからシステム設定を開き、サイドバーで「ユーザとグループ」をクリックし、「ゲストユーザ」の横にあるボタンをクリックする。項目が下のほうにあるため、スクロールが必要になることがある。
ここで注意したいのが、ゲストがログイン中は「ゲストユーザ」を選べないことである。設定を変えたいのに項目が反応しない場合は、ゲストのセッションが残っている見込みがある。切り替えではなくログアウトさせてから開く。
開いた先にある選択肢は3つある。
- ゲストにこのコンピュータへのログインを許可: ゲストユーザーがパスワードを入力せずにMacにログインできるようになる。「共有」設定でリモートログインをオフにしている場合、リモートでのログインはできない
- 成人向けウェブサイトを制限: 多くの成人向けウェブサイトへのアクセスを自動的に制限する
- ゲストユーザに共有フォルダへの接続を許可: ネットワークの別のコンピュータから、共有フォルダにアクセスできるようにする
3つ目は名前が似ていて誤解されやすい。これは目の前でMacを貸す話ではなく、ネットワーク越しに共有フォルダへ接続させる設定である。手渡しで貸すだけなら、この項目をオンにする理由は無い。貸し出しのためにゲストを有効にするなら、1つ目だけをオンにするのが最小の設定になる。設定を戻すときも同じ画面で、オンにした項目をオフに戻すだけで済む。
消えるもの、消えないもの
ゲストユーザーの一番大きな性質がここにある。ログアウトすると、そのセッションで作ったものは残らない。
ゲストが作成したファイルは一時フォルダに保存されますが、そのフォルダとその内容はゲストがログアウトすると削除されます。 出典: support.apple.com
これは利点でもあり、事故の元でもある。貸した相手が書類を作り、保存したつもりでログアウトすると、その書類は取り戻せない。写真をダウンロードした、フォームに長文を書いた、といった作業も同じである。貸すときに一言伝えておくだけで防げる。
逆に消えないものもある。ゲストは設定の変更ができないので、こちら側のアカウントの設定やファイルには影響しない。デスクトップの並びや、アプリの設定が書き換わることは無い。人に貸したあとで自分の環境が変わっていた、という状況はゲストユーザー経由では起きにくい。
macOSのゲストユーザーはログアウトやアカウント削除時に一時ファイルをすべて消去するので、削除後にデータを取り出すことはできません。 出典: mac.point-b.jp
作ったものを渡してもらう必要がある場面では、ログアウトの前に外部のストレージかクラウドへ移してもらう。ここを段取りしておかないと、作業そのものをやり直すことになる。
消え方にも段階がある。ログアウトした時点で一時フォルダは削除されるが、ブラウザで開いていたページの履歴や、入力途中だったフォームの内容も同じ扱いになる。相手が長い文章を書いている途中なら、席を立つ前に別の場所へ写す時間を取っておきたい。逆に、貸すこちら側から見れば、この仕組みが「相手のデータを預からずに済む」という意味を持つ。人から借りたMacに自分の情報を残したくない場面でも、ゲストの枠で作業するという選択が使える。
FileVaultがオンのときはSafariだけになる
これが一番引っかかりやすい点である。ディスクの暗号化であるFileVaultをオンにしている場合、ゲストユーザーにできることは大きく狭まる。
Appleの案内では、FileVaultがオンの場合、ゲストユーザーはSafariにアクセスできるが、暗号化されたディスクにアクセスしたりファイルを作成したりはできないとされている。つまり、ウェブを見ることはできるが、アプリを開いて書類を作る使い方はできない。
この条件は、貸し出しの目的によって評価が変わる。来客がメールを確認したいだけなら支障は無い。逆に、表計算で見積もりを作ってもらう、画像を編集してもらうといった用途では成立しない。その場合はゲストユーザーではなく、通常ユーザーを1つ追加して渡すほうが合っている。
FileVaultをONの状態でゲストを削除、その後FileVaultをOFFにしたうえで、再度ゲスト作り直すくらいです。 あとOS的にはバグあり古いバージョンなので、最新までアップしてください。 出典: detail.chiebukuro.yahoo.co.jp
貸す前に確かめる順番としては、FileVaultの状態を先に見る。システム設定の「プライバシーとセキュリティ」にFileVaultの項目があり、オンかオフかがそこで分かる。オンのまま「アプリが使えない」と悩むより、先に条件を知っておくほうが早い。FileVaultを切る判断は、暗号化をやめることと同じ意味を持つので、貸し出しの都合だけで決めない。
ログイン画面にゲストが勝手に表示される場合
検索で多い困りごとがこれである。有効にした覚えが無いのに、起動するとログイン画面にゲストの枠が並んでいる。
見分けの手順は次の通りである。まずシステム設定の「ユーザとグループ」を開き、「ゲストユーザ」の横のボタンから「ゲストにこのコンピュータへのログインを許可」がオンになっていないかを見る。オンであれば、そこをオフにすると表示が消える。
オフになっているのに表示される場合は、別の仕組みを見る。「探す」アプリの機能が有効なMacでは、紛失時の位置の特定のためにゲストの入口が残る作りになっている。この場合の枠はSafariだけが使える限定されたもので、ふだんのゲストユーザーとは別物である。そういう位置づけだと分かっていれば、放置してよいかどうかを自分で決められる。
もう1つ確かめたいのが、macOSの版である。古い版のまま使っていると、設定と表示が食い違う不具合に当たることがある。先に引用したやり取りでも、古い版を使い続けていたことが指摘されている。ソフトウェアアップデートの画面を開いて、待っている更新が無いかを見ておく。
貸す前に確かめておきたいこと
ゲストユーザーを有効にするだけでは、貸し出しの準備は終わっていない。目の前でMacを渡すなら、次の3点を先に見ておくと困りにくい。
1つ目は、自分のアカウントをログアウトするか切り替えるかを決めることである。切り替えて渡した場合、自分の画面は裏で開いたままになる。相手が終えたあと自分の画面に戻れるのは便利だが、開いていた書類はその間ずっと開いている。長く貸すならログアウトしておく。
2つ目は、共有の設定である。「共有」設定でリモートログインや画面共有がオンになっていると、ゲストの扱いが変わる場合がある。ゲストを有効にするタイミングで、いま何がオンになっているのかを一度見ておきたい。
3つ目は、ゲストが使えるアプリの範囲である。FileVaultがオンならSafariだけになる。オフであれば、インストール済みのアプリは概ね開ける。相手にやってもらう作業がアプリを必要とするなら、その条件を事前に合わせておく。
Appleが案内している範囲を超えて挙動を推測する前に、「ユーザとグループ」と「プライバシーとセキュリティ」と「共有」の3つの画面を順番に見る。これだけで、貸したあとに起きる問題の大半は前もって分かる。
貸したあとに画面が散らかって見える理由
ゲストユーザーで1つ意外な点がある。ゲストのセッションのメニューバーは、ふだん自分が見ているメニューバーとは別物になる。常駐アプリは各ユーザーのアカウントごとにログイン時に起動する設定を持つので、ゲスト側では何も並ばないことが多い。
この差が分かりやすいのは、自分のアカウントに戻ったときである。ゲスト側では時計とWi-Fiとバッテリーだけの素の状態だったメニューバーが、戻ると10個以上のアイコンで埋まっている。人に見せたくないのは書類だけでなく、どんな道具を常駐させているかという情報も含まれる。ゲストの画面が素であることは、その点では都合がよい。
問題は自分の側である。macOSの「メニューバー」設定で並びを調整できるのは、時計、Siri、Spotlight、Wi-Fi、Bluetooth、バッテリー、集中モード、画面ミラーリングといったmacOS自身の項目だけで、常駐アプリのアイコンはそれぞれのアプリの設定に散らばっている。まとめて隠す手段が標準では無い。
メニューバーを整理する道具を入れると、この2種類を同じ場所で扱えるようになる。隠したアイコンを、メニューバーを畳んだまま押してその場でメニューを開ける形にしておけば、画面を人に見せる前にまとめて畳み、必要なときだけ呼び出す運用ができる。何を隠して何を残せるのかはできることにまとめてある。
貸し出しの場面に限らず、画面を共有して打ち合わせをするときや、スクリーンショットを渡すときにも同じ判断が要る。対応しているmacOSの版や、同じ役目の道具を2つ同時に動かした場合にどうなるかはよくある質問に書いてある。試す場合の条件は料金にまとまっていて、ほかの道具との違いはほかの道具との違いで比べられる。
よくある質問
ゲストユーザーで作ったファイルは後から取り出せる?
取り出せない。ゲストが作ったファイルは一時フォルダに保存され、そのフォルダと中身はゲストがログアウトした時点で削除される。相手の作業結果を受け取る必要がある場合は、ログアウトの前に外部のストレージかクラウドの保存先へ移してもらう段取りが必要になる。
ゲストユーザーにパスワードは必要?
必要ない。「ゲストにこのコンピュータへのログインを許可」をオンにすると、パスワードを入力せずにログインできる状態になる。ただし「共有」設定でリモートログインをオフにしている場合、ゲストはリモートからのログインはできない。手渡しで貸す用途に向いた仕組みである。
FileVaultをオンにしていると、ゲストは何ができる?
Safariでウェブを見ることはできるが、暗号化されたディスクへのアクセスやファイルの作成はできない。表計算や画像編集のような作業を頼む用途には向かない。アプリを使ってもらう必要があるなら、ゲストユーザーではなく通常ユーザーを1つ追加して渡すほうが合っている。
有効にしていないのにログイン画面にゲストが表示されるのはなぜ?
「探す」アプリの機能が有効なMacでは、紛失時に位置を特定するためのゲストの入口が残る作りになっている。この枠はSafariだけが使える限定されたもので、通常のゲストユーザーとは別物である。「ユーザとグループ」で「ゲストにこのコンピュータへのログインを許可」がオフであることを先に確かめる。